東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市で唯一、無傷の病院として医療の拠点となった石巻赤十字病院の元院長、飯沼一宇さんを招いた講演会が19日、倉敷商工会議所で開かれました。
石巻赤十字病院は、今から5年前に、沿岸部近くから5キロほど内陸に移転新築されました。新病棟は高い確率で発生するといわれていた宮城県沖地震を想定し、地面から3mほどかさ上げして新築されました。また、揺れを吸収する免震構造、さらに救援物資を貯蔵できる広い地下ヤードや待合室が一次診療スペースになることを見越して予め酸素吸入配管や床暖房を設置するなどハード面を整備していました。さらに、移転を機会に医療スタッフ向けの災害マニュアルは一新され、文字を減らし、図や表を多く使った見やすいマニュアルにしたほか、年に1度は大掛かりな災害負傷者受け入れ訓練も行っていました。そんな中で迎えた去年の3月11日。講演会の中では震災発生直後の混乱する院内が映像で紹介されました。周りの医療機関が水没し電気やガス、水道もストップする中、唯一、機能する病院として医療スタッフが総がかりで被災者の手当てに当たりました。
講演した飯沼さんは「うちの病院がつぶれたら町全体が駄目になる」と、スタッフを鼓舞し、自らが陣頭指揮をとり難局を乗り越えた体験談を語りました。
そして「備えが最も大切。準備し過ぎて困ることはない」と強調しました。
講演会は倉敷商工会議所の医療福祉部が主催して開き、倉敷市内の医療関係者や企業からおよそ110人が訪れ、真剣に聞いていました。




